工場勤務経験生かし作業改善
「JAの指導員さんや先輩生産者の方の協力をいただき、やっと独り立ちできるまでになってきたんです」
謙虚に語る坂嘉代子さん。40年近く、地元の産業機器メーカーとその関連工場で管理職まで務めた末、還暦を前に転身しました。6年目ですが、今やJA上伊那管内のアスパラガス生産者で、反収ベースでも出荷量ベースでも3本指に入る有力農家です。
「工場ではそれぞれの作業に対して改善提案を挙げ、効率化していきます。農業もその要領です。例えばアスパラガスのハウスの幅は2メートル40センチに対してドアは幅1メートルほど。そのままでは幅がある堆肥まき機が入らないので、支柱を簡単に外せる構造にしていちいち分解する手間を省きました。毎年付け替える倒れ止めは、そのままにすることで効率化しました。引っ掛かりを感じたところはどんどん手を入れて直したんです」
実父が存命中は兼業で60アールほどの農地でコメを作っていました。しかし、コメは価格の低落が続いています。そのまま受け継ぐだけでは心もとない状況でした。坂さんは「JAに相談に行きました。花と野菜を勧められ、支援制度の厚いアスパラガスを選んだのです」とさらり。
決断の背景には工場の先輩で、農業に目を向けるきっかけを作ってくれた宮下敏文さんの存在もありました。宮下さんは現在も、共に農作業に取り組む心強いパートナーです。
「現在、世間で言われているスマート農業は、個人の生産者にはとても手が出せない価格の機器が必要です。私が目指すのは低コストでできるスマート農業です。そのための作業改善で、野菜と向き合い、よく観察、研究して、少しでも高い品質の野菜を栽培できるようにしたい―。生涯続く学習だと思っています」
PROFILE
坂嘉代子(さか きよこ)さん
40年近く、地元の産業機器メーカーとその関連工場で勤務。還暦を前に転身した。就農6年目で、アスパラガスの生産に力を入れる。