「一生現役」に魅せられて
「農業の最大の魅力は一生現役でいられることではないでしょうか。この辺りでは90歳のおじいさんが普通に働いています。50歳になったばかりの私なんて若造ですよ。新鮮ですね」
そう言う安田徳治さんは、小牧市で自動車整備関係の仕事に就いていました。発端は息子さんの高校進学に向けて将来像を話し合ったことでした。
「中学3年の夏前、親子を交えた面談があるでしょう。当時、息子はナガノパープルとシャインマスカットが気に入り、自分で、ためていたお年玉で取り寄せるほど。将来的に就農も考えていた矢先、妻(由貴さん)が新規就農者向けの説明会の開催を聞きつけてきて家族で参加することにしました」
会場への送り迎えを担当する運転手感覚で付き合った安田さんですが、説明を聞いているうちに安田さん自身がどんどん引かれていったと言います。家族総出で作業に当たる農業の働き方も安田さんと由貴さんの心をつかんだ魅力で、帰りの車中では、早くも会社を辞めて就農する決断をしていたそうです。
具体的には、JAみなみ信州が管内14市町村と連携して取り組んでいる「南信州・担い手就農プロデュース」事業の南信州担い手就農研修制度を活用しました。2019年、豊丘村に移住し、同村の地域おこし協力隊員(農業研修生)になると同時に、同JAの子会社が運営する研修制度の2期生として2年間、栽培技術の習得に当たりました。
昨年(21年)独立。研修中に学んだ夏秋キュウリと市田柿の栽培に励んでいます。将来家族で描いている農業経営に向け、モモとブドウの苗木も植えました。「農業は大変なこともあるけど、やりがいがある。日々充実していますよ」と笑顔が絶えません。
PROFILE
安田徳治(やすだ とくはる)さん
以前は、小牧市で自動車整備関係の仕事に就いていた。新規就農者向けの説明会に家族で参加したことをきっかけに農業に引かれ、就農を決意。2019年、豊丘村に移住。現在は独立し、夏秋キュウリと市田柿の栽培に励む。